福岡県出身シンガーソングライター吉原しおりの日常を綴る、ブログ。

吉原しおり

シンガーソングライター

とある日の帰り道

地下からいつの間にか地上に現れる

電車の路線というのは私達をのせて

複雑な運び方をする

誰とも知り合いにはならない

同じ路線の同じ時間の同じ車両に

乗っていても 無関係という関係性で

ガタンゴトンと鳴るだけだ

 

皆、降りる駅に着くまで

動画を1.5倍速で視聴したり

読書をしたり各々の自由時間に

充てている。疲れ果てて寝ている人もいる。

現代列車の光景そのもの。

私は無表情の裏に

日中の出来事を浮かべながら

住宅街が3倍速で流れていく窓の外を見ている

駅を出発する度に駅員の変な号令が聞こえる

「や〜!!!」って。

その駅員だけが生きている感じがするこの空間が、

なんとも不思議で奇妙にさえ思えてくる

 

降りる駅に着くと、皆さっきまでの

自由時間から切り替わり

自分の足で家路へと向かうスイッチが入る

 

重力がちゃんと加わった人間に戻っていくように。

現代人は乗り物に身だけでなく

心まで委ねているのかもしれない。

一仕事終え、ホッとしているのがわかる

無意識レベルの意識が細胞に

歪みなのか揺れを起こし

それが表情として現れるのかもしれない。

私はそれを読み取るのが得意な方である。

前に座る女性が聴いている音楽は

オルタナティブ。その隣のサラリーマン男性は

やや前のめりの視線で液晶に食いついているのでネット記事でなにか衝撃的なニュースでもみたのだろう。その隣の小学生の少年は

「お腹すいたな。」

決めつけも激しい所だが、

微妙に揺れ動く表情の読みが

想像世界の入り口なのだと思う。

 

ようやく私が降りる番。

同じ駅に降りる人は

どこか仲間意識が芽生える私だが、

相手は見向きもせず改札を抜ける

悲しい

 

ふと夜空を見上げる

今日も星があるのかないのか

確認して意味はないけど

黄昏たい気分でもないけど

なんとなくっていう動機は

なんにも説明ができなくて

家路を辿っている

 

みんなもきっと同じなんじゃないのか